スマートフォンやパソコンの変換機能に頼るようになって、漢字が思い浮かばないのは今に始まったことではないのですが、一難去ってまた一難。今度は、変換で同じ音の漢字がいくつも出てきた時、どれを使うのか迷ってしまうことがあります。使い分け方がわからないと文章には使えません。結局、意味や用例をさらに調べて、もうひと手間・・・。そんな経験ありませんか。

◎「すすめる」

最近、私が迷ったのは「すすめる」です。「すすめる」と聞いてどんな漢字が浮かびますか。変換すると4つも出てくるんです!

進める/勧める/薦める/奨める

それぞれどんな意味かといいますと、

【進める】・・・前の方へ出す 例)駒を進める
【薦める】・・・人や物のよい点を挙げ、採用してもらうように働きかける 例)先生に薦められた本
【勧める】・・・繰り返し行為をうながす 例)入会を勧める
【奨める】・・・引き立ててほめる、励ます 例)進学を奨める

その時書こうとしていたのは「医師のススメで○○を飲んでいる」というくだりでした。さあ、どの「すすめる」が適当でしょうか。ここでは、「人や物の良い点を挙げ、採用してもらうように働きかける」の意味をもつ「薦める」が一番文脈に合っています。

私が調べていたら、その場にいた先輩から、迷ったら熟語にしてみるといい、と助言をもらいました。例えば今回の場合だったら、進言、推薦、勧誘、奨励どれが一番内容に近いかなと考えてみるということです。

 

◎「よろこぶ」

同じように、比較してなるほどと思ったのは「よろこぶ」です。
「よろこぶ」も、変換すると4つも漢字が出てきます。

喜ぶ/悦ぶ/歓ぶ/慶ぶ

このうち常用漢字は「喜ぶ」だけです。変換で他の候補が出てこなければ、迷わず「喜ぶ」を使ったと思うのですが…気になりだすと止まらず、結局調べてしまいました。
それぞれどんな意味があるのかといいますと、

【喜ぶ】・・・うれしく思う、楽しく思う 例)合格を喜ぶ
【悦ぶ】・・・心のわだかまりがなくなり楽しい、心からうれしく思う 例)不安がなくなり悦ぶ
【歓ぶ】・・・声を合わせにぎやかによろこぶ 例)感動の再会を歓んだ
【慶ぶ】・・・めでたいことを祝う 例)ご結婚お慶び申し上げます

当然ながら、最も汎用的に使えるのは「喜ぶ」です。他は状況や心境に合わせて、使い分けていくようです。確かに言われてみれば、漢字から連想する「よろこぶ」がちょっとずつ違います。

私の友人には悦子さんと慶子さんがいます。この「よろこぶ」の違いを知って初めて、彼女たちの名前の意味に思いをはせました。それぞれのご家族がどんな思いを込めて名づけたんだろうなと温かい気持ちになりました。

変換で出てこなければ考えることもなかった言葉の違い。ちょっとしたきっかけから、文字や言葉の成り立ちを知るのは面白いですね。

 

参考文献
新レインボー小学国語辞典改訂第6版 学研 2020
実用 新国語辞典特装版 三省堂 1985
漢字ペディア https://www.kanjipedia.jp/

寄稿者 ほりえりえこ
湘南在住。小学生の娘と暮らしてます。今を大切に。日々のなぜ、なに、どうしてを大切に。心が動いたこと、子どもに伝えたいことを書いています。