- 季節・暦
- 2023年5月22日
オオキンケイギクの話。
この写真にある黄色い花を見かけたことがあるでしょうか。
花はタンポポより二周り程大きく、茎はひょろひょろしています。コスモスによく似ていますが葉の形が違います。季節も違います。コスモスは秋ですものね。
善了寺のある横浜市戸塚区では、ちょうどゴールデンウィーク明けくらいから、この花が隆盛を誇っています。柏尾川の河川敷にも、国道一号線の沿道にも、住宅街の空地にもあります。去年まではこんなに目立たなかったように思うのですが・・・急に増えたように感じました。
今は便利なもので、スマホのカメラをかざせば花の名前がわかります。
すると「オオキンケイギク」と出てきました。そして合わせて「特定外来生物」という表示が目につきました。
もともとオオキンケイギクは北米原産の多年草で、日本には観賞用として1880年代に入ってきたようです。こぼれ種が自然に広がって、現在ではあちこちで見かけられるようになりました。
「特定外来生物」とは何なのか気になったところ、環境省のホームページにありました。
特定外来生物とは、
外来生物(海外起源の外来種)であって、生態系、人の生命・身体、農林水産業への被害を及ぼすもの、又は及ぼすおそれがあるものの中から指定されます。指定された生物の取り扱いについては、輸入、放出、飼養等、譲渡し等の禁止といった厳しい規制がかかります。
「なぜオオキンケイギクが特定外来生物に指定されたのか?」
北米原産のオオキンケイギクは、強健で冬期のグラウンドカバー効果が高く、花枯れ姿が汚くないという理由で、緑化のため道路の法面などに利用されたり、ポット苗としても生産・流通されていました。
しかし、あまりの強靭さのために一度定着すると、在来の野草を駆逐し、辺りの景観を一変させてしまう性質をもっています。
人の手でこれ以上拡げないようにするため、環境省では、平成18年2月「特定外来生物」に指定しました。
増えすぎを防ぐためには、梅雨時に刈り払いを行い、結実を防ぐことが必要である。河川の土手等に黄色い花を一斉に開花することから、地域の住民に親しまれている場合がある。
人の手で増やしておいて、今度は邪魔者扱いするのもなんだかなぁと思ったのですが、ここで思い出したのが、自然には2つある、という話です。
以前、里山の森林を管理している方から伺った話です。
皆さんが自然と呼ぶものには、二つあります。一つは人の手が全く入っていない自然。高い山や深い森、屋久島のように保護されている自然です。もう一つは人が手を入れている自然。市街地の公園や街路樹。田畑もそうです。私たちが目にするのはほとんどが後者の自然です。
里山は大自然と都市の中間にあたります。里山は人々の暮らしの隣りにあり、ある程度の割合で管理された自然です。人が手をかけなければ荒れてしまいます。もちろん、もっともっと長いスパンで考えれば、台風や山火事等により淘汰され、荒れた里山は次第に大自然へと戻っていきます。
間伐、枝打ち、下草刈り等の作業は、一見すると自然を壊しているように感じるかもしれませんが、間引くことで育まれる命があります。過密な樹木や枝を落とすことで一本一本が大きく育ちます。また、林床に日光が入れば季節の野草が芽吹きます。
このような話でした。
オオキンケイギクが咲いていた場所は、もともとある程度の割合で管理された後者の自然なのです。何を守るのか、何を優先するのか、私たちが普段意識していないだけで、既に人の判断が入っています。
当初私は、単純に花を刈ってしまうのはかわいそうだなと思いました。けれども、オオキンケイギクからの視点もあれば、日本の野草という視点、市街地の環境という視点、住民の視点、虫や小動物の視点等など様々な視点があります。生物は有機的なつながりの中で存在しているわけで、善悪二元論で簡単に割り切れるものではないと考えさせられたのでした。
参考
環境省ホームページ 【環境省九州地方環境事務所】オオキンケイギクについて.pdf
国立環境研究所 侵入生物データベース