境内の柿がだいぶ色づいてきました。渋柿ですので、例年通り、軒先に吊るして干し柿にします。土も肥料も足していませんがよく実ってくれます。柿のたくましさとその恩恵に、毎年毎年、感謝がつきません。
柿を収穫するときに、いくつか実を残しておく風習があると最近知りました。「木守り柿(こもりがき、きもりがき)」と言うそうです。自然の恵みを人間が独り占めしないで、鳥などの動物のためにとっておくのだそうです。分かち合う感じがおおらかでよいなと思いました。
さて、ここからは柿にまつわる自省録。
「杮落とし」
これを何と読みますか?
「カキおとし」どう見てもカキでしょう。意味がわからなくとも「カキおとし」。
はい、少なくとも私はそう読みました。
ところが、、、
「コケラおとし」なのだそうです。
新しい劇場などでの初演を「こけら落とし」といいますね。
杮 柿
左が「コケラ」、右が「カキ」。
縦に一本突き抜けるのが「コケラ」、なべぶたに巾が「カキ」。
活字のフォントによって見分けのつかないものもあり余計に紛らわしいのが難です。
こけらとは、材木を削った時に出る切り屑のことです。工事の最後に屋根のこけらを払い落したことから、完成後初めての興行を「こけら落とし」と言うようになった。
語源由来辞典 https://gogen-yurai.jp/kokeraotoshi/
お恥ずかしながら、こけらが身近になさすぎて、柿が生活に馴染みすぎて、迷わず「カキ」と読んでしまいました。
柿にまつわるお恥ずかしい話が実はもうひとつあります。
「柿の実がたわわになっている。」
この中に誤用した表現が含まれています。
「たわわ」は「たわむ」。つまり重さで弧を描く様子なので、その主体は柿の実ではなく枝なのです。
「春は曙光、夏は短夜」 毎日新聞校閲グループ 岩佐義樹 株式会社ワニブックス 2018
「柿の木がたわわになっている。」
「枝もたわわに柿が実っている。」
が「たわわ」の正しい使い方です。「たわわ」なんて、日常生活ではほとんど使わないんですけどね。生り年が各年でくるそうで、たまたま柿がたくさん生っていたんです。
柿が赤くなると思い出す、日本語の言い間違いでした。