私、ずーっと勘違いをしておりました!

 

五月雨(さみだれ)といえば、芭蕉の俳句が有名ですよね。

五月雨を集めて早し最上川 ― 松尾芭蕉

 

五月の雨と書きますので、当然、五月に降った雨だと思っていました。昔のことですからゴールデンウィークとはいいませんが、気持ちよい初夏の日に雨がいっぱい降った、くらいに思っていました。
ところが・・・

この句は元禄二年五月二十九日、現在の新暦では七月十五日に大石田の最上川の景色が眺められる船宿での俳席のときに披露した発句を改作したものです。中七は初めはあいさつ句の「集めて涼し」でした。

そう、五月は五月でも、旧暦の五月なんです。つまり、上の俳句では、梅雨の後半に降った雨を五月雨と表現していたのです。

 

では、五月に雨が降ったら何というのだろうと思ったら、次のような表現もありました。

旧暦の卯月(四月)に一時的に長雨が降ることがあります。新暦の五月から六月上旬にかけての長雨です。この雨を「卯の花腐し(うのはなくたし)」といいます。卯の花を腐らせてしまうように降り続く雨という意味で、梅雨の走りになることもあります。

すごい着眼点ですね。自然をよく観察していないと出てこない言葉です。

 

五月を含む季語には同様に「五月晴(さつきばれ)」があります。

もともとは、梅雨の合間の晴天をいいました。
今は五月のすがすがしい晴れを指すようになっています。俳句の季語としては、もとの意味で使われることが多いようです。梅雨前線の活動が弱まると、一時晴れ間が多くなります。六月二十日前後によくみられます。梅雨の中休みのあとは、梅雨末期の大雨や集中豪雨が起きることが多いのです。
「さわやかな五月晴れですね」と挨拶することがありますが、「さわやか」は秋の季語なので、放送などでは、アナウンサーが「すがすがしい天気」とか「気持ちのいい天気」などと使い分けています。

こちらは、私の知っている使い方でもよいようです。俳句を詠む方は注意が必要ですね。

 

他には「五月闇(さつきやみ)」という表現も。

もともとは、五月雨の降るころの昼間のうっとうしい暗さをいいます。昼は曇り空で林の下や軒の下などが薄暗くなっています。近年では、梅雨曇りの夜の闇の深さもいうようになりました。

 

私が五月雨ということばを知ったのは、いつのことでしょう。たしか、小学校か中学校の国語で習いました。松尾芭蕉の俳句も、そのとき暗記したものでしょう。あれから●十年!ようやく勘違いを解消することができました。他にも思い込みで覚えていることがありそうです。常に初心忘れるべからずですね。

 

 

参考
「ゼロから始める人の俳句の学校 はじめての季語」 清水潔編著 実業之日本社 2003