こんにちは。
私は2019年4月から瀬戸内海の離島、小豆島で暮らしています。夫と子ども2人と横浜から移住してきました。ここでは島暮らしの日々をお届けします。
前回からの続きです。
小豆島で出会ったことばには、こんなものもありました。
めげる=気持ちがへこむ、ならわかるのですが、島で出会った「めげる」は「壊れる」の意味で使われていました。調べたら四国、中国地方、兵庫、京都、長崎とわりに広い範囲で使われているそうです。
これもよく出てきました。
「その車椅子ついてって!」と言われ、「そばに付いていくってこと?」と思いきや、
「つく」=「押す」ということと知り、意味の微妙な違いに「へぇ~!」と感心した言葉でした。
讃岐弁、和歌山弁にあるようです。
「さあ、立てりましょう~!」と、集団でリハビリ体操をする場面で職員さんがよく使ってました。
これは讃岐弁独自の言葉のようです。
「立てる」というと、棒を立てる、というような他動詞としての使い方が思い浮かぶけれど、讃岐弁の「立てる」は、=「立つ」という自動詞と同じ意味のようです。
立つことができる?という意味での「立てる?」と聞きたいときには、「立てれる?」と使っています。
わりと馴染みやすく使いやすいので、いまは違和感がありませんが、
さいしょは「ん?なんかいっこ多いな?」と思って聞いていました。
かく、は、かつぐ。
小豆島の秋祭りは毎年10月に行われます。
島の各地で掛け声とともに太鼓台がたくさんの人に担がれて運ばれ、八幡神社に奉納されます。
移住して初めての秋、初めて小豆島の太鼓祭りを経験しました。島中に活気と熱気があふれ、真新しい法被を着た子どもたちも、昔お祭りの担い手だっただろうお年寄りの方々も、いつもと違うきらりと輝いた目で太鼓台をみていました。
「かく」は「かつぐ」、掛け声は「チョーサじゃ、チョーサじゃ」。どちらも四国ではよく使われています。うちの子どもたちも、秋になると法被を着て保育園や幼稚園で小さな太鼓台を担がせてもらいました。「ワッショイ」じゃなくて、「チョーサじゃ、どんどんどん!」が彼らにとってのお祭りのスタンダードになっていくのだと思います。
脱いだり着たりが面倒で入浴をしぶる利用者さんがぽつりとこぼす、「たいぎいのう」。
たいぎい…と聞くと、時代劇でお殿様が労をねぎらうときに「大儀であった」というシーンがよぎります。岡山、広島でもよく使われるようです。
なんとなく、「めんどくさい」「しんどい」とはまたちょっと違う、たいぎいとしか言いようがない、独自の億劫さがあるように聞こえる言葉です。
これは「つ」にアクセントがあります。爪も髪も、「つむ」ものなんですね。「つむ?」「つんどく?」「つんだ?」と毎日のように聞く言葉でした。私がいままで「つんだ」ことあるのはお花くらいかなあ…。
じょーずい、も、慣れると言いやすい言葉です。「うまいねぇ!」といったかんじで、「じょーずぃわ!」と言います。
「私の」、「自分の」、は「わがの」「うちんく」が使われていました。
その他、初めて出会った名詞には「おじゅっさん」、「ぱっち」、「ナイロン袋」なんてものもありました。西日本ではどうやらメジャーなこの「ナイロン袋」、関東では「ビニール袋」一択だったので、職場でも保育園でも近所の人も、なにかと日常生活に登場し重宝するあのレジ袋のことを、ビニールの「ビ」の字もださずに「ナイロン袋あるやろ?」「そのナイロン袋にいれてな」「明日はナイロン袋を持ってきてください」と、ナイロン100パーセントなのには驚きました。ナイロンていうと私はストッキングのイメージです。
島のお寺の住職さんは、不思議と「じゅうしょくさん」より「おじゅっさん」のほうがしっくりきます。身近なかんじがするというか…。土地に古くから根付いている響きの心地よさ、がありますね。
名詞で一番びっくりしたのはこれ、「とりのこがみ」でした。
大きくて白い紙、「模造紙」のことですが、「これは模造紙でしょ?」といっても「モゾウシって何?」と全く通じませんでした。とりのこ、つまり卵色の紙という意味があるそうです。愛媛・香川では、おそらくとりのこ100パーセント。この模造紙の呼び方については他にも地域柄があるようで、調べてみたらこんなかんじでした。
学生時代によく使われる模造紙。先生も友達も当たり前に呼んで馴染んでいた呼び方が、随分時間が経ってから違う場所に行って何気なく使ったら全く通用しなかった、というのは面白い体験でした。小さな時間差カルチャーショックというか。ほかにも、自転車、じゃんけん、ピアニカ、どちらにしようかな天の神様いう通り…の続き、などの言葉にも土地によってバラエティがあると聞くので、「えっこれが普通じゃないの?」という経験をした人も多いと思います。
逆に、島の人たちに聞くと関東の人のしゃべり方の特徴は、前回の最後にも出てきましたが
語尾の「さー」と「じゃん」の多用なんだそうです。
いままでは全然意識したことがなく、なんの個性もない言葉をしゃべっていると思っていたけれど、島に来てから自分の「さー」と「じゃん」が確かに多いことに気づきました。
これもまた、小豆島にきて出会った自分のふるさとの言葉、だと思います。
今回、島で出会ったことばをひとつひとつ調べていたら、讃岐弁だけには収まりきらず、
中国地方、近畿地方、九州からの影響も強く受けていることがわかりました。
いろんなところから人が移り住んできて、人も文化も言葉も入り交じって今日がある、
そんな島であることを実感しました。
参考サイト
「ナイロン袋ください」と言われても… 西日本なら「OK!」、関東では「なに?」/ Jタウンネット
「模造紙」の呼び方に地域差くっきり 富山人「ガンピ」愛媛人「鳥の子用紙」…その由来とは / Jタウンネット