ばあちゃんたちのいるところ・その9 いっしょに時間旅行 の巻
お年寄りと過ごす時間のなかには、「いま・ここ」ではない不思議な時間をいっしょに過ごすこともたくさんありました。
昔のことは覚えているけれどいまのことを忘れてしまう、
時間・場所・人の記憶や関係性が曖昧になる、という認知症の主な症状は、私が関わらせていただいた多くの方にもみられました。
「受け止める、否定しない」関わりのほうが、「間違いをただす、現実に戻す」関わりよりも
落ち着いて過ごせるというのは、試行錯誤した現場での実感でもあります。
そしてそれを一歩深めて、関わる側が積極的に「いま・ここ、介護者と要介護者」という関係を越え、
時間と空間をちょっと移動して「孫とばあちゃんの関係を再現してみる」「若かった頃の世界をいっしょに追体験してみる」ことを試みると、
なんて忙しい世界に生きていたんだろう、なんて充実した日々だったんだろう、
だから今でもこういう言動があるのか。ばあちゃん、すごいなぁ!など、新しい発見と尊敬がうまれました。
どんなに現実と違うことを言っていても、それはその人の心理的な事実としていったん受け止める。
そして、その言葉がうまれた背景に想像を働かせる。
そんな心構えでいると、思いがけず素敵な時間旅行につれていってもらえることがあり、
これもまた、この仕事の醍醐味だなぁと、豊かな気持ちで帰路についた日々がありました。
それでは、また次回。お読みいただきありがとうございました。
この漫画の書き手:
喰代彩 (ほおじろあや)
横浜市出身、善了寺のデイサービス「還る家ともに」で介護士として働いていました。
現在は香川県・小豆島にIターン移住して4年目、二児を育てながら島の暮らしや
善了寺デイサービスの思い出について書いています。