被災地の食事
令和6年能登半島地震から半年が経ちました。
被災地の食生活の最初の頃、支給される食べ物は、パン、おにぎりレトルト食品、缶詰などで、野菜はほとんどなかったようです。しかし、能登半島は、もともと、農家がたくさんありますし、『自宅でも自分たちが食べる分くらいだけでも作ってました』と言う風土があり、炊き出しの場所に、被災されている方々がそれぞれにお米や野菜を持ち寄って来る様子をみました。また、炭水化物ばかり取っていて、野菜が摂取できず、便秘になり体調不良になる方が増えたともお聞きしました。避難所の方々に何が食べたいかとお聞きしても、「野菜、生野菜」と言う声も、多く聞こえました。
能登半島地震から学んだ『備えよ常に』
その経験から、「私も、もしかしてこの夏、何かの災害などで野菜が手に入らないような事態に直面するかもしてない。だって、能登の被災者の方々、口をそろえて、『まさか自分がこんな目に遭うなんで、正月の午前中まで思いもよらなかった…』ある方は、『ちょっとコンビニに行って、帰ったら、家がつぶれていた』とも、おっしゃっていました。誰でもいつでも一寸先の保証のない諸行無常の人生であるとの現実の声をたくさん聞きました。お寺は少し高台にありますが、すぐご近所は、過去に浸水した歴史もある浸水指定地域なのですそこで、『備えよ常に』の思いから、「自宅で夏野菜を育てよう」と思い立ちました。被災した方がお寺に避難されるようなことがあれば、たった一食でもみんなでしのげれば、と思いたったのです。きゅうり、ナス、トマト、ピーマンなどの夏野菜を育て始めてみました。育て方がわからず調べながらです。取ってはいけない芽を摘んでしまったり、伸ばしてはいけない芽を伸ばしてしまったり、失敗の連続。それでも何とか、育ってほしいという願いを持ち続け、毎日手をかけていましたら、なんとか立派な夏野菜が少しずつ実ってきました。夏野菜は、1日見に行かないだけでグングン育ちます。その伸び伸びとした成長力から元気を頂くのも元気いっぱい夏野菜を育てさせてもらえるものの醍醐味です。今では、野菜のお世話をするのが楽しくて新たな趣味になりました
夏野菜と募金活動
本堂では、地震の翌日から募金箱を設置しておりました。1月中は、たくさん募金してくださいましたが、半年たった今では、ほとんどテレビでも放映されなくなり、募金も少なくなってきました。そこで、募金箱の横に採れたての夏野菜を置き、【夏野菜をお持ちいただき、お気持ちを能登半島地震の募金箱に入れてください】とお声かけさせていただきますと、色々な方が、「募金したかったので良い機会でした。キュウリ頂きます」となどと、募金箱して下さいます。被災者の方の野菜不足の食生活から、『備えよ常に』を学び家庭菜園で育てた野菜たちが、無関心になりつつあった募金活動にきっかけを与え、みなさんのお気持ちを直接、能登半島地震の支援に生かせるという、当初、予想もしていなかった循環活動になったのです。
能登ノットアローン
能登の方がおっしゃっていました。「能登の復興は、能登の人の努力だけではできない。多くの皆様の、ご協力を頂いて感謝しております」と。考えてみれば、傷つき、苦しんでおられる方が、立ち上がる時、元気な人のちょっとした支えがあれば、少しでも心強く立ち上がれるものですよね。多くの家が崩壊した町の復興を、能登の方々だけでするのは大変なご苦労です。何年もかかるといわれています。自分の実家が被災したら、毎週でも片付けに帰りたいですよね。「頑張ろう能登」ではなく「頑張ろう私たち」『能登ノットアローン』
文責:善了寺坊守 成田美砂