毎年、花が咲きそろうこの時期頃から、善了寺の境内にも蜂が飛び回るようになります。毎年、軒下とか樹の切り株の中とか墓地の中とか様々なところに工夫を凝らしては、巣を作ります。ところが、参拝の方を刺してしまったり、追いかけたり怖い思いをさせるので、蜂には申し訳ないですが、毎年、蜂の巣の駆除業者にお願いすることになります。(去年は2回来てもらいました)ところが見方を変えると、蜂を飼い養蜂をされておられる方もいらっしゃるし、良質なはちみつは自然食品として健康志向の人にも好まれてもいるわけです。

これからの季節、蛍、カタツムリ、セミ、蝶、カブトムシ、くわがたなど愛でられる虫が活動してくる一方で、ナメクジ、蚊、アブ、蛾、ハエ、ゴキブリ、毛虫、ダニ、クモなどたくさんの虫が、悪者として、一方的に身勝手に殺されてしまいます。

また、生活の中でよく目に見かける虫ばかりでなく、虫のついていない綺麗な野菜を消費しているという事は、作物を育てる時の農薬などで目には見えにくい虫も排除し(殺し)ているとも言えます。

去年の夏の事を思い出しました。デイサービスのおばあちゃんの手に蚊がとまっていたので、私が、つぶしてあげました。ところが「あげました」と言うのは私のうぬぼれで、その方は「私は蚊は殺さないのよ。こんなおばあさんの血を吸って生き延びるなら、吸っても良いのよ。元気に生きるのよ、って私は蚊に血を吸わせてあげてるのよ」と言われました。何とも、衝撃的なお言葉で耳を疑い、聞き間違えたのかと思って何度か聞き返してしまいました。そしてその方のお考えをよくお聞きしているうちに、迷わずに自信満々に蚊を殺して良いことをしてあげた気になった自分が恥ずかしくなったのです。

自分の命は多くの命の犠牲の上に成り立っているという事をうけとめ、なるべく一匹でも多く殺さないように努め、謙虚に虫の命を見つめたいと思っています。

できれば、今年の夏は、蜂が境内のどこにも巣を作らないでほしいです。(駆除したくないけど、駆除せずにいられないから~~~~)

文責:善了寺・坊守

成田美砂