江戸時代には当たり前だった、かやぶき屋根の建築。現代では見ることも少なくなってしまいましたが、いったいどのような家屋だったのでしょうか。究極のスロー住宅として、近年、その価値を見直されている「かやぶき」について考えてみましょう。

かやぶき屋根にはメリットがいっぱい!

昔はどこの集落にもあった、かやぶき建築には、どのようなメリットがあるのでしょうか。

夏は涼しく、冬は暖かい

かやぶきのメリットはたくさんありますが、その中でも利点を実感しやすいのが「断熱性に優れている」ということ。多くの茅を使用するかやぶきの屋根は、分厚い空気の層ができるため、一般的な屋根に比べて外部からの熱を遮る能力が高いという特徴があります。そのため、冬は室内の温度を保って暖か。反対に、夏は屋根からくる太陽熱を遮って涼しいというメリットがあるのです。

意外に高い防水性、屋根の軽さも魅力に

屋根部分に茅を使うとなると、「雨漏りしやすいのでは?」と防水性が気になる人がいるかもしれません。しかし、実際には使われる茅の層が分厚く、意外なほど水を通さないと言われています。
また、茅はあくまで植物のため、一般的な屋根に比べると非常に軽く仕上がるのも大きなメリット。柱や壁など家の本体部分に大きな加重をかけることがないため、結果として、家の耐久性を向上させるという利点もあるのです。

かやぶきの建築はどうして少なくなった?

こうしたさまざまなメリットを持つかやぶき建築ですが、最近では、一部の観光地や田舎などでしか見られなくなってしまいました。その理由は、いったいどこにあるのでしょうか。

メンテナンスには地域の力が不可欠

その最も大きな理由とされているのが、江戸時代以降にコミュニティが変化したことです。茅という自然素材を大量に使うため、かやぶき屋根はこまめなメンテナンスが欠かせません。江戸時代は、このメンテナンスを村に住む人たちが持ち回りで担当していました。しかし、明治時代以降はコミュニティの変化により、次第にこうした習慣がなくなり、メンテナンスができなくなってしまったことが、かやぶき屋根を減らした原因とされています。

究極のスロー住宅として、海外で熱視線!

日本では、次第に数を減らしているかやぶき屋根。しかし、海外では環境へ与える影響が少ないとして、注目を集めていることをご存知でしょうか。

断熱効果の高さが北国で受け入れられる

フランスは、こうしたかやぶき屋根が注目されている国のひとつ。家を新築したりリフォームしたりする際に、かやぶき屋根を選択する人が増えているといいます。

その大きな理由はかやぶき屋根の断熱効果。北海道より高緯度にあり冬の寒さが厳しいフランスでは、セントラルヒーティングで家全体を暖めるため、膨大な暖房費がかかってしまいます。一般的には断熱材を入れたり、窓を二重ガラスにしたりするなどの対策をしていますが、その一環として、かやぶき屋根を選択する人が増えてきているとか。寒さの厳しい北西部ブルターニュのある業者では、受けた注文の65%がかやぶき屋根というケースもあるほどです。

資材が無駄にならないエコ住宅

さらに、環境に与える影響の少なさも評価されています。自然素材を活用するかやぶき屋根は、3年に1度くらいの割合で痛んだ部分を取り替える必要があるものの、メンテナンスさえしっかり行えば、40〜50年も保つのです。また、仮に解体することになっても、使える部分は古茅といって、次に屋根を葺く際に再利用できます。もちろん、痛んで使えなくなった部分はそのまま堆肥にでき、廃棄物をほとんど出すことがありません。

将来的には「かやぶき」が当たり前に?

単純にエコなだけでなく、住むうえで多くのメリットを生み出すかやぶき屋根。自分が新しく建てる家をかやぶきにするのは少し勇気がいるかもしれませんが、実際に住んでみるとその良さが実感できるはず。近い将来、日本でもかやぶき屋根を選択するのが当たり前になる時代がくるかもしれませんね。

参考:

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