- 住職のつぶやき
- 2015年8月4日
いのちとつながる大地のお堂〜聞思堂建築ストローベイルワークショップ 動画公開〜
2011年に始まり2012年に完成した善了寺にある聞思堂の建築。現在は、本堂・客殿・庫裏の建築真っ最中です。現在進行している建築についても、随時報告していきたいと思います。まずは、この聞思堂ストローベイルワークショップの動画をご覧頂きたいと思います。
新しい時代をここから創っていこう
新しい時代をここから創っていこう
NPO法人カフェ・デラ・テラは、善了寺と学生と商店会そして地域の方々が一体となってつくりあげてきた運動です。その舞台となるのが聞思堂の大切な意味だと思っています。運動をつくりあげてきた重要な仲間の一人が、明治学院大学教授の辻信一先生です。動画の中で
「僕は「ポスト3・11時代」と、新しい時代のことを呼んでいるんですけれども、ポスト3・11時代を象徴する場所。それを僕たちが実際に手作りで創ってきた。この舞台の上でこれから、新しい時代が創られていく。それが聞思堂の意味だと僕は思っています。」
このように語ってくれています。
お寺の建築とは、まさに「新しい時代を創っていく象徴」ではなかったかとあらためて、学ばせていただきました。善了寺の建築はその基礎を、私の祖父である第16世成田恵門住職が形作ってくれています。戦後まもなく資材のない時代に、建築されたその斬新なデザインは、まさに新しい時代を創っていく象徴であったと思います。今回の本堂はそのデザインを大切に受け継ぎ、新しい時代を創っていく願いを継承して建立していきます。
お寺は新しい文化をつくり出していくことが本当にやりやすい場所
また動画の中で
「これはルネッサンスなんですよ。ルネッサンス、つまり、これまで我々が作り上げてきた社会というのは、あの3・11が示したようにもう完全に破綻しているんですね。これは、日本だけではありません。世界的に見ても大転換期にある。その意味では、その転換をやるぞと、若い人たちには特にね、自分が新しい時代の主人公なんだと、ある意味覚悟を決める。僕らの世代はやっぱり長くこういう社会に暮らしてきたんでなんかね、これしかないという思いがあって、しがみつこうとするんですよね。だから、そういう意味では若い人たちの足を引っ張ってしまう。ここで、もう一回本当に最初から考え直して、新しい価値観を、新しい文化を生みだしていくんだというくらいの気持ちで、やっていかなくてはいけない。お寺はそういう意味では本当にそういうことをやりやすい場所なんです。」
と語ってくれています。覚悟と言っても何か悲壮感が漂っているのではなく、ワークショップに参加されている皆さんの笑顔から、本当に新しい価値観が生まれようとしているのだと思います。私たちは、不安や心配事を煽って何かが動いていくことにならされているのかもしれません。「このままでは・・・・。」という強迫的な衝動に駆られて行動を起こしてしまう。危機感は重要だと思います。現実を見据える力が問われているのだと思います。しかし、不安や恐怖を煽って人を動かすのであれば、いままでの、あり方と何か違うのでしょうか。
みんなの笑顔と涙から新しい時代を創っていこう
今、私たちは時代の大転換期にあります。「これしかないとしがみついてしまう。」そこから引き剥がされていくことは、本当に恐ろしいことだと思います。だからこそ、笑顔と涙を大事にしていきたいと思います。ワークショップを通して、誰もが、大変作業なの中で、笑顔にあふれていました。不思議です。薄っぺらい常識を超えています。強迫的に追い込まれて作業をしているのではありません。でも、誰もが一つの建築を成功させようとできることから力を合わせていく。
?仕事とは、「仕える事」と書きます。神仏に仕えることがその基本にありました。だから、何よりも優先でした。オカルトのように罰が当たるからという強迫的なことでは、決して笑顔には遇えないのではないでしょうか。楽な作業ばかりでは決してありませんでした。約4トン弱の発酵した土を一輪車で何度も往復して運んできました。でも、それぞれが助け合いながら、新しい建築を創り上げていきました。それぞれの仕事を合わせると書いて「仕合わせ」と読みます。苦役ではなく、苦を抜き、しあわせをつくり出す仕事がそこにあったのではないでしょうか。
そんな仕事が完成したときに出遇う涙は、つながりを取り戻し、新しい自分を育ていく、そんな出遇いの中で生まれてくるのではないでしょうか。決して楽ではなかったけれど、厳しい面もたくさんあったからこそ、多くの学びを頂き、自分が育てられ深められた。そんな素敵な涙を知る人は、誰かのせいではなく、自分をわきまえ、配慮と節度もって社会と関わることを楽しみとすることができるのだと思います。
新しい文化を、新しい価値観をここから創り上げていきましょう。みんなの笑顔と涙から始まる新しい時代を切り開くそんな場にお寺もなっていきたいと思っています。是非動画を見て感じてください。
参考 聞思堂の建築
動画 2012年制作
戸塚・善了寺境内に建築したお堂「聞思堂」建築を追ったドキュメンタリー。先人の英知とも呼べるさまざま技術を持った職人が全国から集まり、このお堂を作ることで、物質社会における私たちの存在意義を一考させてくれる。
企画 善了寺
制作 ハートアライブ
取材・構成・編集 北原康裕
撮影 北原康裕 花光昭典
ナレーション 渡辺千里
テーマ音楽 「森のうた」松谷冬太